レナリドミドの薬価が、平成22年7月14日都内で開かれた中医協*の総会で決定し、7月16日薬価基準**に収載されました。これによって、保険診療でレナリドミドによる治療を受けることができるようになりました。
レナリドミド(販売名 レブラミドカプセル5㎎)の薬価は、
1カプセル(5㎎) = 8,861円 に決定しました。
多発性骨髄腫の治療に使う場合、一日25㎎を、一ヶ月に21日間服用し7日間休薬するスケジュールが基本で(患者さんのお体の状態によって減量することがあります) 、 一日あたりのレナリドミドの費用は、
8,861円×5カプセル = 44,305円 一ヶ月あたりのレナリドミドの費用は、
8,861円×5カプセル×21日 = 930,405円
となります。
○ 自己負担はどのくらいに?
患者さんが負担される毎月のレナリドミドの薬代の自己負担額は、次のとおりで、
70歳未満で一般の収入がある方の場合、3割負担で279,121円
70歳以上で一般の収入がある方の場合、1割負担で 93,040円
このほかに、診察や検査費、ほかの薬の費用もかかりますから、毎月病院の窓口で支払う自己負担は、70歳未満の3割負担の方で30万円程度、70歳以上の1割負担の方で10万円程度になります。
○ なぜこんなに高額なの?
レナリドミドは、大変高額な薬価になりましたが、この価格は既に治療に広く使われている欧米と比べて大きく変わらず、日本だけが特別高額になったわけではありません。
新しい薬を作るためには、基礎的な研究をし、開発をし、試験を重ね、患者さんのご協力を得て治験をし、承認申請をするという何年もの間、多くの人が携わるプロセスがあります。
また、研究段階、開発段階の薬はたくさんあって、そのうちのごく限られたものだけが患者さんの手に届けられます。このような研究開発に対する投資も考えると、新しく開発された画期的な新薬が高額であることに対して、簡単に「この薬は高すぎる。安くして欲しい」とは言えないと骨髄腫患者の会は考えています。
○ 高額療養費制度を活用しましょう
とは言っても、患者さんの現実問題としては、毎月10万円~30万円近いお金をお財布からだして、医療費に充てていては負担が重すぎ、治療を継続することが難しいと言われる方がたくさんいらっしゃいます。経済的な負担を少しでも軽減するため、高額療養費制度を利用してください。
骨髄腫患者の会では、高額療養費制度をめいいっぱい活用していただくために、患者の会発行の情報誌「がんばりまっしょい11号」で、レナリドミド治療やレブメイトの紹介とあわせて、経済的負担軽減のための「高額療養費制度活用術」を詳しく紹介しています。
「高額療養費制度の利用の仕方がわからない」、「高額療養費の払い戻しを受けるまでの3ヶ月間、大金を立て替える経済的な余裕がない」など、患者の会に届くよくある質問の回答をまとめ、紹介しました。
患者の会の相談窓口も用意して、「どこにどんな風に尋ねたらいいのだろう」とか、「役所の窓口はいつも混んでいて、上手く窓口で尋ねることができるか心配」という方の相談にもできるだけ乗りたいと思います。
がんばりまっしょい11号をご希望の方は、こちらのページからお申し込みください。なお、これまでから定期的に「がんばりまっしょい」の配送を受けている方にはお届けしますので、あらためての申し込みは不要です。
■ がんばりまっしょい11号は7月30日発行です。
高額療養費制度で十分みなさんの負担がカバーされるとは思っていませんが、現状ある制度をめいいっぱい使うことで少しでも負担を軽減されることを願っていますし、患者の会はできるだけお手伝いします。
○ デキサメタゾンもあわせて承認され、薬価が決定しています
レナリドミドはデキサメタゾンと併用します。デキサメタゾンは、VAD療法やサリドマイドとの併用で骨髄腫の治療で広く使われている骨髄腫の患者さんにはおなじみの薬で、これまでデキサメタゾンの投与を受けるときは、点滴か、「デカドロン0.5㎎錠」を服用していました。
骨髄腫の治療でデキサメタゾンを使う場合、40mgや20㎎という大量投与することが多く、0.5㎎の錠剤を何十個も一度に飲まなければなりませんでした。このため、服用の際の患者さんの負担や大量の薬の個数管理が問題となっていました。
これらの問題を解消するためこのたび、1錠4㎎のデキサメタゾンの錠剤「レナデックス錠4mg」が承認され、薬価が決定しました(1錠 171円)。
レナデックス錠に関しても、がんばりまっしょい11号で紹介していますので、参考にしてください。なお、デカドロン錠0.5㎎もこれまでどおり多発性骨髄腫の治療に使うことができます。
○ レナリドミドの治療がスタートする準備が整いました!
薬価が決定し、レナリドミドによる治療をスタートする準備が整いました。製薬会社によると、7月20日発売が開始されます。
なお、レナリドミドによる治療をスタートするためには、各病院でレナリドミドの採用を決定するための手続きや、レブメイトへ医療者を登録する手続きを経てはじめて処方が可能になりますので、すべての病院で7月20日から治療がスタートできるということではありません。 レナリドミドによる治療を待っている方は、主治医の先生とよく相談してください。院内の条件さえ整えば、7月20日以降はレナリドミドによる治療を受けることが可能です。
○ とても早いスピードで治療開始が叶いました!
レナリドミドは、希少疾病用医薬品に指定されていて、優先的な審査を受けることができました。この結果、申請から1年という短期間で承認されました。
また、希少疾病用医薬品制度の「できるだけ速やかに患者さんの治療に使われるように」という精神に基づき、薬価も緊急収載されました。
「多発性骨髄腫の治療に必要不可欠となるレナリドミドをできるだけ早く患者さんの治療に使われるように」と、厚生労働省の担当官の方々、製薬会社が大変な努力をしてくださった結果です。関係のみなさまに心から感謝しています。ありがとうございました。
本件に関する患者の会問い合わせ窓口
日本骨髄腫患者の会 上甲 恭子(じょうこう きょうこ)
e-mail owner-imfjapan@myeloma.gr.jp
電話 090-6908-2189 (平日10時~16時)
*中医協とは?
中央社会保険医療協議会の略称。
健康保険制度や診療報酬の改定、新しく承認された医薬品の薬価などについて審議する厚生労働相の諮問機関。
**薬価収載(薬価基準収載)とは?
医療機関において保険診療(健康保険を使って治療を受けること。70歳未満
の患者さんなら3割負担、70歳以上の患者さんなら1割負担)で治療を受けられ
るよう薬の価格を決定すること。
保険診療によって使用できる医薬品の範囲(品目表)と、保険での支払価格(価格表)を規定したものを「薬価基準」と言い、厚生労働大臣によって定められています。医薬品は承認を受けた後、薬価基準への収載手続きがとられ、薬価基準に収載されてはじめて保険診療で治療を受けることができます。
○ 参考
・薬剤の一般名 : レナリドミド
(レナリドマイドと呼ばれることもありますが、正式にはレナリドミドです)
・薬剤の販売名 : レブラミド
・安全管理システムの名称
: レブメイト RevMate(レブラミド適正管理手順)
・製薬会社のホームページ
レブラミドサイト、レブメイトサイト等