さらに骨髄腫においては、骨髄腫細胞と骨髄ストローマ細胞の接着阻害及び骨髄腫細胞の増殖に必 要なサイトカイン(IL-6など)の分泌抑制など、骨髄の微小環境に作用することでも抗腫瘍効果を発揮 する、これまでの薬剤とは異なる全く新しい効き方をする薬剤です。 ベルケイド®は、注射用の薬で、数秒間で静脈内に注射します。
ベルケイド®は既に世界77ヶ国(2006年9月現在)で承認されています。海外では、再発又は難治性 の骨髄腫患者対象に実施されたベルケイド®単剤の臨床試験で、奏効率(CR+PR+MR)が35%であると 報告されました。(*) この結果を受け2003年5月に米国FDAでは、「これまでに少なくとも過去に2回 以上の前治療歴があり、最後に受けた治療後病気の進行が認められた骨髄腫患者」を対象に、申請 から4ヶ月未満という異例の早さで、ベルケイド®を承認しました。その後再発又は難治性の骨髄腫患 者(前治療歴が1~3回)を対象として、高用量デキサメタゾンとの比較が多国間臨床試験として実施さ れました。中間解析の結果、腫瘍増殖抑制期間及び生存期間において、ベルケイド®群がデキサメタ ゾン群に対して有意に延長したため、この試験を早期に中止し全例にベルケイド®投与を認めることと し、米国では、この試験成績をもとに「少なくとも過去に1回治療歴がある骨髄腫患者」への適応症の 変更申請を行い2005年3月に本適応症が承認されました。(**)
日本では、2004年4月より上記の海外臨床試験を基に「再発又は難治性の多発性骨髄腫患者」を対 象とした臨床試験(n=34)が行われ、1.3 mg/m2の有効性(CR + PR)が33%であり、海外臨床試験の有 効性と同等の成績でした(この用法・用量は海外用量と同じ、1回投与量1.3 mg/m2を週2回2週間投 与10日間休薬です)。 これら成績をもって2005年10月に承認申請し、2006年10月に承認、同年12月1日に薬価収載、 発売されました。
ベルケイド®は効果の高い薬剤である反面、国内臨床試験、個人輸入製剤使用例において、関連性 が否定できない急性肺障害・間質性肺炎(死亡例を含む)が報告されています。国内での臨床試験症 例が極めて限られており、また肺障害等の重篤な副作用の発現が認められることから、販売後、一定 数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に詳細な使用成績調査を実施すること を条件に承認されました。 また、この全例調査は重篤な副作用等の緊急時に十分対応できる医療施設において、血液がんの 治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、ベルケイド®の投与が適切と判断される患者さん のみに行い、治療開始に先立ち、患者さん又はその家族に同意を得てから投与を開始することが、義 務付けられています。また治療初期は入院環境で医師の管理下にて適切な処置を行う必要があり、ベ ルケイド®はどの医療施設でも受けられる治療ではありません。発売後、一定期間はベルケイド®の治 療を受けられる医療施設は限られていますので、主治医とよく相談し治療を決定してください。
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※なお、ヤンセンファーマ株式会社より、患者向け情報が公開されています。
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くすりのこと
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ベルケイド®の安全性情報や、治療上の注意点、治療を受けられる医療機関等の情報が掲載されてい ます。ベルケイド®治療を検討する方、治療中の方は、必ずご覧下さい。
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また、ベルケイド®に関するお問合せ窓口は下記の通りです。
ヤンセンファーマ株式会社 コールセンター TEL : 0120-23-6299 お問合せ時間 : 9:00~18:00(土・日・祝日を除く) website : http://www.janssen.co.jp/sickness/kusuri/index.html |
ベルケイド®のしびれについてはこちらをご覧下さい。
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* Richardson PG, et al. N Eng J Med 348: 2609-2617, 2003 ** Richardson PG, st al. N Eng J Med 352: 2487-2498, 2005 |
取りまとめ: 上甲 恭子 (2006/12) |