骨の治療薬が新たに承認されることが決まりました
12月1日に開かれた厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は、骨病変の治療薬デノスマブ(販売名 ランマーク、製造販売 第一三共)の承認を了承しました。
今後、承認のための手続き、病院へ供給されるための手続きを経て投与が可能になります。
骨の治療薬とは?
人の骨は生涯にわたって“新陳代謝”をし、古い骨を壊して新しい骨を造るサイクルを繰り返すことによって骨の強度を保っています。このことを「骨のリモデリング」と呼びます。
リモデリングで重要な働きをするのは、壊す方の細胞が「破骨細胞」、造る方の細胞が「骨芽細胞」です。ふたつとも大切な細胞です。
骨髄腫の患者さんは、骨髄腫の腫瘍細胞によって「破骨細胞」の方が活性化されるため、「破骨細胞」と「骨芽細胞」のバランスが崩れ、骨が壊される方が強くなります。そのため、ちょっとしたことで骨折をしたり、しそうになったり、背骨が圧迫骨折したりして背中や腰などお体が痛くなることがよくあります。
その「破骨細胞」の活性を抑えるための治療薬の投与を受けることで、骨を守ったり、痛みから解放されたりします。これまでから、ビスホスホネート(販売名 ゾメタ)という薬が骨の治療薬として承認され、多くの患者さんが投与を受けています。
デノスマブとビスホスホネートの違いは?
今回承認を了承されたデノスマブは、破骨細胞の形成や活性化に必要なタンパク質である「RANKリガンド」を標的とした世界で初の抗体薬で、破骨細胞がやたらに働かないよう抑制する効果があります。
これまであった骨の治療薬のビスホスホネートとどう違うかについては、ふたつの薬は破骨細胞を抑制する目的は同じですが、作用のメカニズムが異なります。ビスホスホネートは破骨細胞に直接作用して破骨細胞を阻害する薬で、デノスマブはRANKリガンドというタンパク質に作用します。
効果についてデノスマブとビスホスホネートのひとつゾメタの比較試験が海外でなされた結果は、骨に関連する効果は同じ程度と考えられています。
一方、生存期間にどの程度影響を与えるかについては、海外での比較試験ではデノスマブとゾメタの投与を受けたふたつのグループの患者さんの条件が整っていなかった(骨髄腫自体の治療の背景などが違っていた)こともあり、まだはっきりした結果はでていません。
今後新たに治験がはじまり明らかになることを期待しています。また、12月10日からアメリカ サンディエゴで開催される全米血液学会でも話題になるのではないかと思われます。
デノスマブのよい点、そうでない点は?
デノスマブに期待される点は、皮下注射で受けるデノスマブには腎臓の機能に問題がある患者さんでも投与が可能ではないかということです。
ゾメタは腎臓の機能が低下している患者さんには慎重に投与しなければなりませんでしたが、そのような患者さんにも骨の治療薬の選択肢が生まれることを期待しています。
気をつけないといけないことは、デノスマブにもゾメタと同様に顎骨壊死の副作用の可能性がいわれています。ですから、投与の前に歯科の受診をして口腔内のチェックは必要ですし、投与を受けている間は抜歯などの歯科治療は控えるなど、十分に注意が必要です。
また、大切なこととして、デノスマブは骨の治療薬として承認される世界で最初の抗体薬で、新しい作用メカニズムの薬ですから、未知の副作用に常に気を配らないといけません。
期待をもって、そして慎重に
骨の治療薬に新しい選択肢がまたひとつ生まれました。こうやって、1歩ずつ新しい薬がひとつずつ増えて患者さんのQOLが高まることは嬉しい限りです。企業、行政当局のみなさまにお礼申し上げます。
同時に私たち患者は、新しいメカニズムの薬に対して慎重な姿勢が大切です。
当会発行の多発性骨髄腫情報誌「がんばりまっしょい14号(2012年2月発行)」では、デノスマブ承認に関する速報をお届けする予定です。そちらも参照の上、担当の医師、薬剤師の先生とよくご相談ください。
本件に関する患者の会問い合わせ窓口
日本骨髄腫患者の会 上甲 恭子(じょうこう きょうこ)
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電話 090-6908-2189 (平日10時~16時)