多発性骨髄腫の骨病変は、破骨細胞と呼ばれる骨を壊す細胞が活発になることによって起こります。
人の骨は、破骨細胞による破壊と骨芽細胞による形成をバランスよく繰り返すことによって、よい状態を保っています。
ところが、骨髄腫患者さんの場合、腫瘍細胞が破骨細胞を刺激しそのバランスが崩れ、破壊が進みその結果、骨が弱く脆くなります。骨が弱くなると、病的骨折と呼ばれるちょっとしたことで骨折したり、背骨の圧迫骨折を起こしたり、骨の痛みが起こったり、レントゲン写真で骨が薄くなっている箇所が発見されたりします。半数以上(骨髄腫研究会の統計によると8割以上)の患者さんにこのような骨病変が現れます。
骨病変を放置しておき、症状がひどくなると日常生活に支障をおよぼし、生活の質(QOL)が下がります。骨痛などの自覚症状があったり、検査で骨に異常がみられる方は、できるだけ速やかに骨病変の治療を受けることをおすすめします。
骨病変の治療には、
1) 骨髄腫そのものの治療 | 化学療法など |
2) 破骨細胞の活動を抑える治療 | ビスホスホネート剤 |
3) 放射線治療 | |
4) 痛み止めなど対症療法 |
がありますが、ここでは破骨細胞の活動を抑えるビスホスホネート剤について紹介します。
ビスホスホネート剤のひとつゾメタは、2006年4月に多発性骨髄腫の骨病変の治療薬として日本で初めて認可されました。ゾメタを投与することによって、骨病変の進行を遅らせたり、症状を軽減させたりする効果が明らかになっています。
ゾメタは、
ゾメタの副作用として、比較的頻度の高いものとして、
まれですが注意が必要なものとして、
などがあります。
腎機能への注意は先のとおり、投与量を減らす、投与時間を延長するといったことが検討されます。
顎骨の壊死については、関連性も不明確で、発生頻度は高くありませんが、起こると食事が摂りにくくなるなど困ったことが起きますので、十分注意が必要です。アメリカで顎骨の壊死が起こった患者さんを調べてみると、
こういう方々にみられるというような報告もされています。( Badros A. J Clin Oncol 24 945-952, 2006 )
ゾメタ投与前に歯科治療を受ける、定期的に歯科検診を受ける、毎日の口腔ケアを怠らないなど予防が大切です。ゾメタ投与中に歯の痛みや歯茎の腫れなどが起こったら、主治医に伝え、歯科の診察を受けてください。
日本骨髄腫患者の会では、多発性骨髄腫の骨病変のこと、その治療のこと、ビスホスホネート剤のこと、その副作用のこと、副作用を予防するために注意することなどを解説した 『ビスホスホネート剤を理解するために3点セット』(DVDと小冊子2種)を、注射剤のビスホスホネート剤の投与を受ける多発性骨髄腫の患者さん向けに作成し、無料で差し上げます。
ご希望の方は、こちらをご覧ください。
なお、骨病変がない患者さんにゾメタを予防的投与する有効性ははっきりわかっていません。副作用との兼ね合いで、十分な検討が必要です。
ゾメタの抗腫瘍効果についてその可能性は示唆されていますが、臨床的な投与量、投与期間などはっきりしたデータはまだありません。
参考資料
骨髄腫の骨病変について
とりまとめ 骨髄腫患者の会 上甲恭子 |
監修 福岡大学病院 血液糖尿病科 高松 泰先生 |