:よくある質問 (FAQ) 2 アミロイドーシスについて

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よくある質問 (FAQ) 2 アミロイドーシスについて

2009.05.23 [FAQ]

 

アミロイドーシスは、多発性骨髄腫の患者さんの10~15%にみられる合併症の一つですが、現在はこれといった治療法が無く、その予後を左右、短縮する疾患の一つです。発生原因がはっきりせず、難病指定もうけています。

1.アミロイドーシスとは
 不溶性の線維状蛋白であるアミロイドが細胞に沈着し、その組織の機能を障害する疾患である。基礎疾患不明の原発性(突発性)のもの、多発性骨髄腫(MM)などに伴うもの、炎症性疾患に伴うものなどがあり、その種類数は多い。
 (ここでは、多発性骨髄腫に伴うアミロイドーシスに関して整理してきたいと思います。)
 多発性骨髄腫に伴うアミロイドーシスとは、骨髄腫細胞から産生分泌される免疫グロブリンであるM蛋白に由来するアミロイド繊維蛋白が各種臓器や細胞組織に沈着して、臓器障害を引き起こすものである。

2.病因
 M蛋白が、なんらかの理由でアミロイド変性を起こし、アミロイド線維となって組織に沈着するが、その機序はよくわかっていない。アミロイドーシスを伴うものは、M蛋白のなかでも、Bence Jones型に多く、λ型に多いとされている。MMにおけるアミロイドーシス合併はMMの臨床病期とは無関係にみられることから、アミロイドーシス発症にM蛋白の量はかかわらないという報告もあるが、血清M蛋白が高値安定型はアミロイドーシスの発症を考慮する必要があるという報告もある。

3.症状と診断
 アミロイドーシスの診断には特別なものが無く、臨床症状からその発症を疑うことしかできない。その発症を疑ったら、その組織の生検を行いアミロイド物質を証明しなければ確定診断には至らない。
 アミロイドは、全身性にどの組織にでも沈着するため、障害された臓器の機能不全から診断する。沈着が多くみられる臓器として、心、舌、骨格筋、腸管等である。そのほか、全身臓器の小血管、腱、末梢神経、肺、肝、腎、脾、リンパ節、皮膚、皮下組織、骨髄などにも沈着がみられる。これらの臓器不全、すなわち不整脈や心不全症状、腎不全、それらに伴う浮腫、下痢、消化吸収障害、巨舌、嗄声、肝脾腫、リンパ節腫、末梢神経障害、手根管症候群、えん下障害、起立性低血圧、アミロイド疹等である。初発症状としては、倦怠感、体重減少から起こることが多い。心疾患では、心エコーに特徴的な所見がみられる。
 確定診断は、生検でしか得られないため、MM治療中に上記のような症状が出現した時には、アミロイドーシスを疑う必要がある。また、骨髄生検などのさいに、アミロイドに対する検査をしておくとよい。

4.治療
 確立された治療法はいまだ無い。しかし、初期のアミロイド沈着は可逆性といわれているので、アミロイド沈着が進行し、臓器機能不全が不可逆的になってしまってからでは遅く、早期発見、早期治療を心がけることが必要である。そのためには、生検を積極的に行う必要がある。治療法としては、①アミロイド産生を抑えるーMMに対する化学療法、②沈着したアミロイドの融解、③アミロイド沈着臓器の支持療法に大別される。

①化学療法
これは、通常のMMに対して行われている治療です。これにより、
M蛋白の減少あるいは消滅をはかり、アミロイドの産生分泌を抑えようとするものです。
  
 MMに対する化学療法は、主にMP療法が行われる。その他VAD療法も効果をあげている。

その他、インターフェロン、コルヒチンなどの紹介もされていますが、文献上ではMP、VAD療法が良いとしています。
また、自家造血幹細胞移植による寛解例の報告もあります。



②アミロイドの融解
 DMSO(ヂメチルスルフォキサイド)が極性有機溶媒でアミロイド線維を可溶化することが知られているが、保険適応外であること、長期投与しなければ効果が見ら
れないこと、独特な臭いと体臭を伴い飲みにくいこと、治療効果が高くないことなどから、臨床上ではあまり使われていない。

4’-iodo-4’-deoxydoxorubicin(IーDOX)
 ヨードドキソルビシンは95年にイタリアで開発された薬で、アミロイドと結合し、アミロイド線維の増大を抑制する効果がある。しかし、日本では治験中で情報が得られない。アメリカでも最近使われ出し、症例数と効果判定を収集中である。

③支持療法
 症状にあわせて通常の心不全や、腎不全などの治療を行う。
 臓器移植によって効果が得られている報告もある。
 消化器の下痢には、long-acting somatostain anal ogueが有効である。出血傾向は、血管壁へのアミロイド沈着による脆弱性、肝へのアミロイド沈着による凝固因子産生低下、消化管での吸収障害によるビタミンK欠乏、過剰線溶、特異的凝固因子インヒビター産生などが原因としてあげられる。これらにはMPやステロイドの投与が効果的である。

5.予後
 アミロイドーシスを合併すると予後が悪くなる。特に、心臓や腎臓へのアミロイドの沈着が伴うと予後不良である。しかし、化学療法によるM蛋白産生細胞の減少に伴って、沈着したアミロイドも減少することが期待されるので、状態の許す限り積極的かつ慎重に化学療法をおこなうべきである。 
 
(取りまとめ)金 景美 (1999/3/20)