国際骨髄腫財団日本支部

:2004年アメリカ血液学会報告

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2004年アメリカ血液学会報告

konishi 2004.12.07 [海外情報][学会関連]

畑裕之先生による全米血液学会(ASH) 出席レポート

 

 毎年恒例 熊本大学医学部血液内科の畑裕之先生による 全米血液学会出席レポートです。 山ほどある発表の中からトピックスを紹介してくださっています。

 

2004年・アメリカ血液学会報告

 

 

 

2004年12月4日~7日まで 第46回アメリカ血液学会が米国サンディエゴで開催されました。 例年通り、数多くの情報の宝庫でした。 学会の情報は以下のリンクからたどれます。

http://www.hematology.org/meetings/2004/attendee/index.cfm?CFID=4385181&CFTOKEN=72397295

 



学会に先立ち、12月3日に医療従事者向けに、 Multiple Myeloma Research Fundation および International Myeloma Foundation によるシンポジウムが2つ開催されました。 前者について紹介します。シンポジウムのタイトルは New Clinical Strategies and Emerging Research in Multiple Myeloma であり、Kenneth C. Anderson氏を座長として 6名の演者による講演がありました。 内容は、抗がん剤が効かなくなる(薬剤耐性)メカニズム、 新しい治療、自家、他家骨髄移植、骨病変に対する治療、 ベルケードによる治療など多岐にわたりました。
このシンポジウムは、 この学会での骨髄腫に関するほとんどの話題をカバーしており、 最新の話題と現状を把握することができましたので、 以下に一部を紹介します。

 

 

  1. Jean-Luc Harousseau氏による移植関連の話題
    • 自家 PBSCT はこれまでの化学療法よりも優れた効果があるが、 Event Free Survival(全く無症状でいられる期間)は これまでの化学療法とあまり差がない。
    • 2回の PBSCT は1回よりも優れた効果があるが、 その差は大きくはなく、また、 2回の PBSCT をもっても治癒が得られにくい現状は打破できない。
    • PBSCT を併用した大量化学療法の代わりになる治療法として、 MPT療法(メルファラン、プレドニン、サリドマイド)が提唱されており、 これは MP療法を上回る成績であるが、 本当に PBSCT を上回る成績かどうかを今後検証する必要がある。
    • PBSCT に先立つ治療法はこれまでは VAD療法が用いられてきたが、 サリドマイド+デカドロンやベルケード+デカドロン、 ベルケード+サリドマイド+デカドロンなどが試され始めている。
    • PBSCT の際の大量メルファラン療法に、 ベルケードを加える方法も考案されている。
    • 予後不良と予測される症例を対象としたミニ移植と自家 PBSCT を比較した試験(IFM 99/03 vs 99/04)では、 生存期間に差がなかったので、 ミニ移植を行う症例は十分考慮して選ぶべきである。

     
  2. G.David Roodman氏による骨病変に関する話題
    • 骨病変にはこれまでのとおりビスフォスフォネートが有効である。
    • ビスフォスフォネートによる治療中に歯科治療をうけると、 骨壊死が起きることがある。

     
  3. Paul Richardson氏によるサリドマイド誘導体とベルケードの話題
    • サリドマイド誘導体には2種、Lenalidomide(RevlimidTM、 CC-5013)と CC- 4047(Actimid)があるが、Revlimid は第2相、Actimid は第1相治験中である。
    • Actimid について
      Actimid は 44例を対象とする第1相治験が終了した。 Response Rate は高かった(CR + PR + MR: 61%)。 しかし催奇形性が問題となる薬剤である。
    • ベルケードについて
      ベルケードの第3相治験が再発、 難治骨髄腫 669例を対象として終了した。 まだ解析の途中であるが、 ベルケード投与群はデカドロン投与群にくらべて 有意に生存期間の延長が見られた。 進行し始めるまでの期間(Time to Progression: TTP)が、 約 2ヶ月延長した。
      もっとも多い副作用は血小板減少であった。
      今後、ベルケードをデカドロンやサリドマイド誘導体と併用する治験が予定されている。

 


そのほか、学会でも以下のような発表がありました。
 


#206 65歳~75歳を対象とした MP療法と MPT療法、 およびメルファラン大量療法の比較

  • Partial response は MP 34%、MPT 84%、メルファラン大量 74%と MPT がもっとも有効であった。
    長期予後はまだ不明ですが、大量化学療法をしのぐ成績が MPT療法で得られる可能性が出てきました。

#335 自家 PBSCT 後の維持療法としてのサリドマイド+プレドニソロン

  • 200~400mg のサリドマイド連日と 50mg のプレドニソロン隔日を自家 PBSCT 後に維持療法として内服するもの。 第2相試験であり TTP は 32.3ヶ月であった。 400mg の群は副作用のため減量が必要であった。
    今後、第3相試験に移行するようですが、 プレドニンとサリドマイドの併用が 何らかの再増悪を防ぐ作用を示すことが期待されます。

 


その他の新しい薬剤については以下のものが発表されていました。

  • PicropodophillinInsulin-Like Growth Factor-1 Receptor 阻害剤
  • SGN40 抗 CD40 抗体
  • SCIO-469 P38a MAPK 阻害剤
  • CHIR258 チロシンキナーゼ阻害剤
  • CCI779 mTOR 阻害剤
  • G3139 Bcl-2 アンチセンスヌクレオチド
  • Atiprimod STAT3 リン酸化阻害剤
  • 17AAG, IPI-504 hsp90 阻害剤

などです。
 

 


全体の流れとして、 ベルケード、サリドマイドは骨髄腫の治療に不動の位置を築いています。 これからは、どのように使うかが問題とされています。 初めての治療に使うのか、再発してから使うのか、単剤で使うのか、 ほかの薬剤と併用すべきかなど検討されるべき項目は多いのです。
これらの検討の結果が明らかになるのは数年先のことになりますが、 これまでとは違った希望の持てる時代になってきているのは 間違いのないところです。
 

(文責:熊本大学医学部血液内科 畑裕之)