2007年採択者紹介 | 広島大学医学部付属病院血液内科 |
坂井 晃 先生 |
テーマ | 「骨髄腫細胞におけるcyclin D1過剰発現の意味するものと |
受賞者からひとこと このたびは堀之内朗賞を受賞でき大変光栄に存じます。この賞の意味するものを肝に銘じ、 多発性骨髄腫の治療及び研究にさらに精進したいと存じます。我々の行っている研究は、骨髄腫細胞においてサイクリンD1の過剰発現がどのような細胞 学的特性をもたらしているか解明し治療に繋ぐことを目的としています。サイクリンD1の 過剰発現は多発性骨髄腫の約40%に認められ、最近の報告では、サイクリンD1過剰発現の ある骨髄腫は低悪性度グループに属し、自己末梢血幹細胞移植併用のメルファラン大量療法 に対する治療成績が良好であると言われています。このことは乳癌や大腸癌においてサイク リンD1の強発現は悪性度の高い腫瘍であると報告されているのとは異なり、骨髄腫細胞で はサイクリンD1の発現は薬剤に対する感受性を高めていると推測されます。したがって 薬剤投与によって、サイクリンD1過剰発現骨髄腫細胞では細胞内のどのシグナル伝達経路 が活性化または抑制されているか明確にすることで、骨髄腫細胞を細胞死に導く重要な経路 を見出せると思われます。さらにこのことはサイクリンD1を発現していない骨髄腫細胞に も応用できると考えられ、多発性骨髄腫の代表的な治療薬であるデキサメタゾンやメルファ ラン以外に、新規治療薬であるベルケードやサリドマイド誘導体を用いて解析中です。 |